2022年『知の解放と電子革命』

 あらゆる人が、あらゆる情報に触れる権利と機会を得るべきモノという理念から、全ての書物、情報が電子化され、誰でもアクセスができるように、全ての情報は「クラウド」に吸い込まれた。
 それは、個人所有の書籍を除いて、小さな町も含めた公共の全ての図書館に 所蔵された書籍にまで波及した。それにともない各地で電子化済みの書籍は 廃棄され燃やされた。
数名の学者や本の愛好者たちはそれが、現代の 【焚書坑儒】だと異を唱えたが、アメリカに端を発するこの電子化の大きな潮流を 止める事はもはや出来なくなっていた。
かくして紙媒体である書物、教科書、新聞、設計図、取り扱い説明書に至まで電子化の波は押し寄せ、世界中の図書館から紙の書籍が消えた。
 書籍を収蔵するスペースを必要としなくなった図書館は、利用者に専用電子パッド を貸し与えた。
図書館に来た利用者はそれを使ってクラウドから情報を降ろし、 図書館は本の代わりにコーヒーを提供するカフェとなった。